
エカサータカは、たった一枚しかない大切な上着を、お釈迦様に差し出しました。このように、自分の物やお金、時間など、大切なものを捧げることを、仏教では、「布施」といいます。
エカサータカは初め、上着がなければ、妻が寒くて困ってしまうと思い、布施をやめようとしました。妻への優しい思いやりは、素晴らしいことです。しかし、家族を思う心は、自分だけを思う「小さい心」より少しだけ広い、「中くらいの心」でしかありません。
仏教は、もっと「大きな心」を持つことが大切であると説いています。それは、自分も家族も勘定に入れず、ただ純粋に「他のため」を思う心です。仏様への布施は、その大きく清らかな心の表れなのです。
善の習慣づくり
お釈迦様は、善を行う時に迷ったり惜しんだりしていては、身につく功徳が少なくなることを説かれました。
ことわざにも、「善は急げ」といわれるように、善を思い立ったなら、すぐに行動しなければなりません。
エカサータカのように、「こうしたい」「こうした方がよい」と思っていても、迷ってしまうことは誰しも経験があるでしょう。自分中心の心に打ち勝つには、どうしたらよいのでしょうか。
たとえば、仏様に手を合わせている時、いつもは自分のことばかり考えている私たちでも、欲を離れ、清らかな気持ちになります。また、誰かに親切にしてもらった時には、嬉しくなって、「今度は自分も何かしてあげたい」という気持ちがわき起こります。このように、心がきれいな瞬間が多ければ多いほど、自分中心の考えは少なくなり、自分の欲に打ち勝つことができるのです。
そのためには、日々、仏様に心が向いている時間をつくり、善の習慣をつくることが大切です。朝夕にお参りをしたり、お寺でお釈迦様の教えについて学んだり、家族で話し合ってみるのもよいでしょう。
そうした日々の習慣づくりが、いざという時に迷わず善を行える、大きな心を育てていくのです。
文・夕凪 ねね
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