黒牛は、自分を大事に育ててくれたおばあさんに日頃から感謝しており、何かお礼がしたいとずっと思っていました。その思いを、荷車の男との出会いをきっかけに、初めて行動に移し、恩返しを示すことができました。このように、誰かからの恩を知り、恩返しすることを「知恩報恩」といいます。
日本でも『鶴の恩返し』を始め、多くの昔話で恩の大切さが説かれ、 「動物でも受けた恩を忘れない。人間ならなおさら、恩を忘れてはならない」 と、私たちの心に訴えかけます。
日頃あまり気にかけることはありませんが、私たちが毎日ごはんを食べることができるのは、自然の恵みのお蔭であり、不自由なく水を飲んだり学校に通うことができるのは、これまで社会を作ってこられた人々のお蔭であり、私たちがこの世に生まれてくることができたのは、お父さん、お母さんのお蔭であり、そして数えきれないほどのご先祖のお蔭です。 その無限とも言える大きな恩に報いようと励むことが、人としての道です。
このことを、お釈迦様は、
「知恩報恩の者は、人の中の宝である」
「知恩報恩は、立派な人になるための行いである」と仰せです。
真の恩返し
おばあさんにとって、本当の恩返しとは、黒牛が元気でいてくれることでした。その心は、まるで親が子を思う心のような、見返りを求めない、ひたすら与えるだけのきれいな心です。
私たちも、恩に報いるには、こうした慈しみの心に学び、他を思い、他のために行動することに喜びを感じられるようになることが大切です。
皆さんの周りにはどんな恩がありますか。それに気づこうとすることから、恩返しは始まります。そして、恩返しの道を歩めば、私たちもいつか立派な人となり、仏様のため、世のため人のためにお役に立てる人となるのです。
文・青空 みやび
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