食うか食われるか、いつも命の危険に脅かされる弱肉強食の世界。楽しいこともあれば苦しいこともある人間の世界。これらの世界に住む虎の親子と王子が出会いました。
自分よりもはるかに大きくて恐ろしい虎の姿を見たなら、誰もが、兄たちと同じように、立ち去ってしまうのではないでしょうか。
ところが、末っ子の王子は自らの命と引き換えに虎の親子を助けました。身を投げ出すだけでなく、動けなかった母虎のために自分自身を傷つけ、母虎を元気にさせたことからも、王子の強い決意を感じます。
「苦しみの世界」には、人間や畜生といった六つの世界があります。その上には「悟りの世界」があり、四つの位に分かれています。これらの世界で生きる者の目的は、「悟りの世界」の最高の位である「仏」になることです。そこは、苦しみがなく本当に幸せな世界です。そのために、私たちは、生まれ変わり死に変わりしながら、苦しみから離れるための修行を続けています。
私たちが悩み、苦しい時には、たいてい自分のことばかり考えています。逆に、自分のことを考えずに、家族や友だちのことだけを考えて行動する時、悩みや苦しみは起こらないものです。
つまり、大切なのは、「相手のことを思いやる」心です。そしてその究極の姿が、王子のように、命を投げ出して誰かを救う姿なのです。
このように、本当の幸せを求めて修行し、自分も、他人も救われることを願う人を菩薩といいます。
自覚と決意
たとえば、何かで悩んでいる友だちや、仕事で疲れて帰ってきた家族を見て心配し、元気になってほしいと思い、行動することは、まさに菩薩です。そうした菩薩の心は、誰もが持っています。 皆さんの中にある菩薩の心を自覚し、誰かを救うためには、ヒーローや王子のように、どんな困難にも負けない強い心を持って歩むことが大切です。
文・秋空 あゆむ
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