悪いことをせず、善いことをするということは、皆さんが幼い頃から、ごく当たり前のように、家庭や学校などで教えられていることでしょう。
しかし、善いことをするというのは、簡単そうでいて、難しいものです。たとえば、家のお手伝いは、なかなか自分から進んでできず、手伝うように言われて、しぶしぶする人も多いことでしょう。学校の掃除当番なども、先生の目が届かないところでは、いいかげんに終わらせることはありませんか。
誰も見ていない時や、ちょっとしたことでも、善いことをするというのは、強い意志や勇気がいるものです。仏教では、善を行うことを「功徳を積む」といいます。今月は、功徳について学んでいきましょう。
お釈迦様の積まれた功徳
お釈迦様の弟子に阿那律尊者という目の見えない弟子がいました。
ある日、尊者は衣のほころびを縫おうとしていましたが、どうしても針の穴に糸を通すことができません。途方にくれた尊者はつぶやきました。
「修行者の中で、誰か私のために、この針に糸を通し、功徳を積もうとする者はいないだろうか」
すると、誰かが尊者に近づき、
「阿那律よ、さあ、私が功徳を積ませてもらおう」
と手を差し出しました。その声の主は、なんとお釈迦様だったのです。尊者は驚いて申し上げました。
「お釈迦様、私が今つぶやいたのは、誰か修行者の中で、功徳を積み、真の幸福を求める者はいないかということです。すでにお悟りになったお釈迦様に功徳を積むように申し上げたつもりはございません」
すると、お釈迦様は次のように仰せになりました。
「阿那律よ、真の幸福を求める者ということであれば、私に勝る者はいない。仏は生きとし生けるものを救うためにいかなる幸福をも求めるのである」
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