平等な慈悲
四つの慈しみの心とは、「四無量心」という、次の心をいいます。
1 慈…楽を与えること
2 悲…苦を取り除くこと
3 喜…人が幸福になるのを見ても、ねたまずに心から喜ぶこと
4 捨…好き嫌いで差別しないこと
第1に、「楽を与える」とは、楽をさせるとか、楽しませるという意味とは違います。たとえば、周りの人や生きものに優しく接することで、相手を安らかな心にさせたり、喜ばせることをいいます。
第2に、苦しみの原因となるものは、身体的なものだけではなく、精神的なものもあります。たとえば、重い荷物を持っている人がいたら手を貸してあげたり、友だちが悩んでいる時、親身になって相談に乗ってあげたりすることも、「苦を取り除く」ことです。
第3に、人と自分を比べてしまうと、うらやましく思ったり、ねたむ心が生まれがちです。そうではなく、人が幸せと感じていることに、ただ純粋に共感し、「心から喜ぶこと」が大切です。
最後に、私たちはつい、「この人は好きだから親切にしよう」「知らない人だから放っておこう」などと考えてしまいがちです。そのような自分のものさしから離れて、平等に物事を見ることが大切です。
仏様の慈悲の心は、量り知れないほど大きく、まるで母親が自分の子供を愛するような純粋な愛情を、生きとし生けるもの全てに注いで下さいます。我が子は大切だが、他の子はどうでもいい、というのは慈悲の心とはいえません。自分の好き嫌いで差別しないことが大切です。
誰にでも優しく
今回の逸話で、お釈迦様は、人から悪い行いを受けたとしても、その人を恨むどころか、哀れみの心を起こし、救うべきだと仰せになりました。
相手に嫌なことをされたからといって、自分の心を怒りや憎しみで染めてしまっては、善いことは一つもありません。「仕返しをしてやろう」などと考えたり、行動しようものなら、相手と同じように悪を犯してしまうことになります。それよりも、いずれ善い結果が現れてくることを信じ、善い行いをし続けることが大切です。
そのためには、お釈迦様の教えを学び、「自分の心を整える」ことが重要になります。教えを学び、実践していくことで、心は安らぎます。人の言葉に心を乱されなくなり、人に優しく接することができるようにもなります。日々、教えを学び、心を磨いていきましょう。
文・日向 うらら
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