二つのアシの束は、お互いが寄り添い、支え合うことで立っていることができます。もしも、あなたにとって直接関係する家族や友だちが突然いなくなったらどうしますか。きっと、生きていくのに困ってしまうことでしょう。
お釈迦様は、それ以上に、自分とは関係なさそうに見える人やものとも、この二つのアシの束のように関係し合い、お互いに支え合っていると教えておられます。たとえば、自然界で、人間や動物は植物の出す酸素を吸って、二酸化炭素を吐き出しています。反対に植物は、人間や動物が吐く二酸化炭素を吸収して酸素を排出します。お互いに関わり合い、他を支え、生かしているのです。
「森林浴」という言葉がありますが、森の中を歩くと心が癒やされるのは、私たちを生かしている大自然の有難みを感じるからかもしれません。他にも、人間から嫌われがちなゴキブリやハチ、クモといった虫たちも、他の生き物を食べ、食べられるという食物連鎖の中で生きており、何か一つでも足りなくなってしまえば、バランスが崩れ、私たちの生活にも影響が出てくることでしょう。
このように、直接、私たちとは関係なさそうに見えるもの、嫌いなもの、必要なさそうに見えるものとも、つながり、支え合っているのです。この世のもの全てに役割があり、全てのものはお互いに影響し合って、この世が成立しています。これを、仏教では「縁起」といいます。つまり、この世に必要のない人やものはないということです。
周りへの感謝と行動
「お蔭様」という言葉があるように、私たちの周りには、気づかないうちに蔭で支えてくれているものがたくさんあります。それにどれだけ気づくことができるかで、心の豊かさ、人生の豊かさが変わっていきます。心が豊かになれば、その思いや行動がつながり合って、周りに幸せな世界が広がっていくのです。
文・飛鳥 ゆめ
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