「両舌」は二枚舌とも呼ばれ、人の仲を引きさく嘘をつくことで、仏様が最も嫌われる行いとされます。ジャッカルは、ライオンと牛を食べるために、この二枚舌を使いました。
身近な例では、「あの二人が協力しなければ、私が活躍できる」と思ったり、「友だちと親しくしているあの子がいなくなれば、私がもっと仲よしになれる」と考えたりして、陰でコソコソと、その人の悪口を言って、その人を嫌いにさせるような行いをいいます。
こうした両舌を使うのは、「自分さえよければいい」という考えや、「自分が嫌いな人をいじめたい」という意地悪な心、「自分よりちやほやされている人が許せない」という、ねたみの心などが原因です。その考えや行動は、人の仲、つまり、人と人の心のつながりを引きさいてしまいます。その「引きさく力」から、お釈迦様は、両舌を「刃物」にたとえられ、厳しく禁じられました。
真心をこめて
私たちの使う言葉には、刃物のように、人を傷つけてしまう力があります。しかし、反対に、人と人の心をつなぎ、信頼を強める力もあります。皆さんは、困っている時、友だちがかけてくれた一言に、救われたことはありませんか。
私たちは日々、多くの人に支えられて生活しており、決して自分一人の力で生きているわけではありません。様々な恩を受けている周りの人に、素直に感謝する心は、人のことを思う考え方につながっています。そうした考え方からは、自然と思いやりのある正しい言葉が生まれ、自分と相手の心が通じ合う、温かい世界が広がるのです。
「舌は禍の根」です。
日々、自分の使う言葉や、その言葉を使った理由を振り返り、仏様の教えに触れて心を清らかにし、真心のこもった言葉を使うようにしましょう。
文・
布施 大志
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