私たちの父母には、その両親である祖父母がいて、祖父母にもまた、その両親がいます。そうして数えていくと、10代前までの御先祖の数だけでも1000人を超え、20代前まででは、100万人を超える膨大な人数になります。そうして私たちまで命をつないできて下さった御先祖は、今、どのような世界にいるのでしょうか。
古歌に、
ホロホロと なく山鳥の 声聞かば 父かとぞ思ふ 母かとぞ思ふ
と詠われるように、もの悲しげに鳴く山鳥に生まれているかもしれません。
あるいは、頻婆娑羅王の御先祖のように、常に空腹に苦しむ餓鬼の世界に生まれているのかもしれません。
私たちは、地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天という六つの苦しみの世界を生まれ変わり、死に変わりしています。しかも、ほとんどの人間は悪ばかりを犯すため、死後は、地獄、餓鬼、畜生といった苦しみの世界に生まれるとされます。私たちの御先祖の多くもまた、それらの世界で苦しみながら、救いを求めているのです。
廻し向けのために
頻婆娑羅王が御先祖のことを忘れていたように、私たちも日頃、御先祖を意識することは少ないでしょう。しかし、御先祖は苦しみながらも、私たち子孫がお釈迦様の教えに出遇い、善い行いをすることを願っています。
その苦しみを和らげ、御先祖が次に生まれ変わる世界をよりよいものにするためには、頻婆娑羅王が行ったように「廻し向け」が必要です。
「一粒万倍」といって、一粒のモミから、たくさんのお米が実るように、私たちのたった一つの善い行いでも、多くの御先祖を幸せにすることができます。さらに、日頃、悪ばかり犯している私たちが積む善は少ないため、「廻向」という、佛様が積まれた功徳を廻し向けて頂ける手立てがあります。
今、私たちが人間に生まれたことを御先祖に感謝し、善い行いや廻向をさせて頂いて、御先祖に功徳を廻し向けていきましょう。
文・飛鳥 ゆめ
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