羅睺羅尊者は、突然、悪者になぐられましたが、決して怒ることはありませんでした。恨みや怒りを抱き、相手にぶつけると重い罪となり、自分自身が苦しみ続けることになるからです。
しかも、ケガはいずれ治りますが、恨みや怒りを人に向けた報いは、一生の間だけではなく、寿命が終わっても消えず、来世まで及び、どこかで必ず、自分に返ってきます。
あふれ出る怒りの感情を抑えることは難しいことですが、その瞬間だけ、ぐっとこらえることができれば、来世まで続いてしまう罪をつくることなく、苦しみを避けることができます。それだけではなく、むしろ、常に安らかで、災いのないところに生まれるという幸せの種をまくことができるのです。さらに、羅睺羅尊者は、怒らなかっただけではなく、襲ってきた相手を、慈しみの心で思いやりました。
今の世の中では、悪いことをした人なら恨んでもよい、恨まれても仕方がないと思ってしまいがちですが、どのような人にでも慈しみの心を注ぐのが、仏教徒として正しい生き方です。
善き友の大切さ
新型コロナウイルス感染症が世界中に広がり、これまで当たり前だった生活ができなくなっている今、皆が忍耐する時です。
仏教における忍耐は、「忍辱」といい、ただの我慢ではなく、先を見据えた、前向きで、智慧ある行いです。しかし、それは、なかなか一人では実践できません。皆で耐え忍ぶことを教え合い、戒め合うことが大切です。
羅睺羅尊者がとっさに忍辱を実践できたのも、先輩の舎利弗尊者がお釈迦様の教えを説いてくれたお蔭です。
理不尽に感じることが多い世の中にあって、正しく耐え忍んで生きていくために、私たちには、一緒に道を歩む善き友が必要です。善き友と一緒に、お釈迦様の教えを学び、苦しい時も耐え忍んで、周りの人を思いやり、お互いに励まし合って、この状況を乗り越え、明るい未来を切り開いていきましょう。
文・飛鳥 ゆめ
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