突然、罠にかかって捕らえられ、身動きできなくなった子鹿は、決してあわてませんでした。それどころか、落ち着いて、どうすれば助かることができるか、その方法を考えたのです。
この聡明な子鹿は、お釈迦様の過去世のお姿です。この逸話は、
「どんな困難にあっても、あわてず、騒がず、智慧を絞れば、乗りきることができる」ということを教えています。
皆さんも学校の行事などで、計画や予定を立てたことがその通りに進めば、安心ですね。しかし、予測していない突然の出来事には、誰でも冷静な心を失い、驚いたり、パニックになったりしやすいものです。それほど、私たちの心は周りに影響されやすく、静かな湖面のように、落ち着いている時は少ないのです。
身と心の備え
では、どうすれば、落ち着いていることができるのでしょうか。
それにはまず、普段から様々なことを想定し、備えておくことが大切です。
「備えあれば憂いなし」という言葉があるように、どんな状況にも備えておけば安心です。
たとえば、災害には、「身の備え」として、食料や水、懐中電灯などの必要なものを準備したり、タンスが倒れるのを防ぐ器具をつけたり、避難場所を確認したりすることがあげられます。では、「心の備え」は、どうすればよいのでしょうか。
あぶない目にあった時、あわてないためには、まず、「この世は無常である」と自覚することが大切です。無常とは、「変わらないものはない」ということで、今、身の回りにあることが永遠には続かず、私たち自身も、いつ死ぬか分からないということです。
このことを自覚していれば、いざという時に、あわてふためく心を抑えることができます。子鹿が智慧のある鹿王に学んだように、私たちも普段から仏様の教えを学び、智慧を身につけ、何事にも落ち着いて向き合えるようになりましょう。
文・飛鳥 ゆめ
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