自分は生き物を殺したり、物を盗んだりなんてしていないと思う人もいるでしょう。確かに、自分の手で生き物を殺したり、人の物を盗んだりすることはないかもしれません。
しかし、私たちは毎日、自分が生きるために生き物の命を食べています。
さらに、食事以外に、目や言葉によっても、誰かを「殺す」ことができます。「死んでしまえばいいのに」「殺したい」などと言ったり、そのような目つきをしてにらめば、相手を深く傷つけてしまいます。
物を盗むということも、物をうばうことだけではなく、目でも耳でも盗むことができます。テストで隣の人の答えを盗み見たり、人の話をこっそり盗み聞きすることも、盗むことです。
私たちは、自分が毎日悪いことをしているという自覚がないため、それらをやめようと考えることなど、ほとんどないといえるでしょう。
食べ物を残して捨てる時、蚊を殺す時、悪いと思っているでしょうか。人の話に聞き耳を立てる時、悪い行いをしていると思っているでしょうか。
私たちは、悪い行いをしているという自覚がないばかりに、正しい行いができなくなってしまっているのです。
まず、こうしたことが、悪い行いであると知ることが出発点です。
正しい努力と心
そして、「正しい行いとは何か」を知った後は、「正しい行いをしよう」と努力を続け、その思いを深く心に留めなければなりません。
私たちは、悪い行いを完全になくし、正しい行いばかりの生活ができるでしょうか。
私たちは、命ある物を殺してでも、食べなければ生きていけません。また知らず知らずのうちに、目や耳でも盗んでしまいます。
しかし、正しくあろうとする努力、正しくあろうとする心は、持てるはずです。それが生きていく上で、とても大切なことです。
生き物の尊い命に「いただきます」と感謝していただくことや、虫や魚や草木を大切にすることができます。相手の立場に立って、友だちや家族を大切に思っていれば、誰かを、むやみに傷つけることもないでしょう。もし自分がされたらと考え、相手の立場に立てれば、盗むことなどできません。
何が悪い行いで、何が正しい行いかを知り、正しい行いをする努力と心を忘れないことで、正しい智慧が得られると、経典には説かれています。
身の回りで、一つでも正しい行いができるよう、お釈迦様の教えを学び、努力していきましょう。
文・陽美 まり
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