
「布施」とは、思いやりの心をもって、人にお金や物を与えたり、教えを説いたりすることです。また、お金や物がなくてもできる、「無財の七施」という布施もあります。
たとえば、優しい眼差しを注ぐこと、和やかな言葉を使うことや、困っている人がいたら助けること、人の嫌がる仕事を引き受けることなども、布施の一つです。
お釈迦様は、そうした布施を行う時に大切なのは、「とらわれないこと」であると仰せです。自分が誰かを助けた時に、感謝されたり、認められたりすることは、気持ちがよいものです。しかし、そうした見返りを求める心があれば、それは「見返りにとらわれている」ということです。
また、電車やバスで、お年寄りの方が立っていたとしたら、皆さんはどうしますか。「別に自分がやらなくても」とか、「周りの目があって恥ずかしい」などと考え、行動に移せない時もあるのではないでしょうか。それもまた、「自分の計らいにとらわれている」ということです。
何の見返りも求めず、計らいも入れることなく、布施をすることは難しいものです。
では、どうすれば、とらわれることなく、布施を行うことができるのでしょうか。
思いやりの心で
そもそも、「善いことをしたい」という思いは、自分の中にある仏様の心から発せられるものです。
席をゆずれなかった時、後になって、
「ゆずってあげればよかった」「なぜ声をかけられなかったのだろう」と悔やむのは、その心の声に、素直に耳を傾けられなかったからです。
自分にとらわれそうになった時には、困っている相手の立場に立って、その気持ちを想像してみましょう。困っている時、誰からも手を差し伸べられず、一人で悩むのは辛いものです。一言、声をかけてもらえるだけでも、気持ちがほっと落ち着くのではないでしょうか。
このように、一時でも自分のことだけを考える心から離れ、相手の立場に立って考えることで、思いやりの心で行動できるようになっていきます。周りのたくさんの人たちのお蔭で、今を生きることができているように、自分にも、誰かのためにできることはたくさんあります。
私たちは仏様の教えを学び、思いやりの心、素直な心を学び、他のためにできることを実践して、周りの人も、自分も幸せになれる道を歩んでいきましょう。
文・瀬名 みさき
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