お釈迦様のもとで修行している比丘でも、仲間と生活を共にしていると、ささいなことから、けんかになることもあったのでしょう。しかし、けんかになっても、互いに自分の悪いところを反省し、謝り合い、許し合うことができたなら、それだけで円満に収まるものです。
問題は、いつまでも怒り続けることにあります。
今回のお話のように、たとえ相手が一方的に悪口を言ってきた場合でも、反省して謝った相手をいつまでも責めるのは、どうでしょう。
お釈迦様は、
「罪を犯しても罪を認める者は賢い」「謝られても受け入れない者は愚かだ」とさえ仰せになりました。
これは、初めは悪を行った者でも、反省と謝罪をすれば賢者になり、元は被害者でも、いつまでも怒り続ければ愚者になる、ということです。
怒りは、山のように巨大にふくれあがり、人を押しつぶします。つまり、怒りは、人を動けなくさせ、最後には滅ぼしてしまうのです。怒りに任せて相手の気持ちを受け入れなければ、関係は今以上に悪くなり、友だちを失うばかりか、自分も周りからの信用を失いかねません。
まさに、自分の人生すら押しつぶしてしまうのが、「怒りの心」なのです。
賢者への道
皆さんが友だちや兄弟と、けんかになった時は、まず、心を落ち着けて、本当に相手だけが悪いのかどうかを考えてみましょう。けんかの原因をよく見つめて、自分に悪いところがあったなら、素直に謝ることが大切です。そして、相手から謝られた場合は、素直に受け入れることです。
相手の罪を許さず、責め続けるなどの仕返しをすれば、その時はスッとするかもしれませんが、怒りは怒りを呼び、いつか、もっと大きな仕返しを受けます。そうして、いつまでもけんかを続けてしまうのが世の常です。
自分で反省して素直に謝ることができる人、相手の罪を素直に許せる人は、人として成長していくことができます。友だちとの信頼も深まり、周りからも信頼される人になっていきます。そのあり方が、「賢者」といわれるのです。
私たちが賢者になるためには、仏様の教えを聞き、怒りを離れること、心を素直にすることが大切です。
誰もが、間違いを犯すものです。自分の罪を謝る、相手の罪を許す、という心の通い合いによって、仏様の世界が開けてくるのです。
文・飛鳥 ゆめ
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