餓鬼の世界では、食べたり飲んだりしようとしたものが炎になって消えてしまい、常に飢えと渇きに苦しみ、いつまでも食べ物や水を欲しがります。
皆さんは、日本という豊かな国に生まれたお蔭で、食べ物に困ることはありませんが、実は、皆さんの中にも、餓鬼の心はひそんでいます。新しいおもちゃを買ってもらったのに、またすぐ別のものが欲しくなったり、友だちのおもちゃをうらやましがったりしたことはありませんか。そんな時、心は満たされることのない餓鬼界に落ち、おもちゃを買ってもらえないことにイライラしたり、友だちと仲よくできなくなったりと、様々なことで悩み、苦しむことになります。
私たちの耳にする「ガキ」は、子供が欲しいものや、して欲しいことのために泣き叫ぶ姿が、餓鬼界の餓鬼が食べ物を欲しがり、泣き叫ぶ姿と似ていることからきているのです。
欲張らない心
では、このような苦しみの餓鬼界から身も心も離れるためには、どうすればよいのでしょうか。
まずは、日本という恵まれた国に生まれたことに感謝し、何不自由なく育ててくれた両親に感謝し、自分のいる環境に感謝しましょう。そして、「あれもない」「これもない」と、ないものねだりをするのではなく、「あれもある」「これもある」と、今、自分を生かしてくれているものの存在に気づき、たくさんの感謝を見つけることで心は満たされ、もっと欲しがる心や、誰かに嫉妬する心が入るスキマが、だんだんなくなっていきます。すると、「自分さえよければ」「自分のもの」という考えから、「他のために」という考えに少しずつ変わっていきます。そうなれば、困っている人を助けたり、みんなで分け合うことが自然にできるようになってくるでしょう。
お釈迦様の教え、六つの仏道実践の一番初めには「布施」があります。これは、欲張った餓鬼の心を離れ、他のために施す実践です。
私たちは何一つ持たない裸で生まれ、その身体さえも両親から頂いたものです。そして、死ぬ時にはお金や物はもちろん、この身体も持っていくことはできません。お金や物を自分のものだと欲張って苦しむのではなく、他に施して心を磨いていくことで、より充実した幸せな人生を歩んでいきましょう。
文・日向 うらら
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