皆さんは自分の御先祖を知っていますか。「おじいちゃん、おばあちゃんまでは知っているけれど、それより前の御先祖は知らない」という人が多いのではないでしょうか。普段は御先祖のことを意識せずに生活している私たちですが、皆さんが今、生きているのは、間違いなく、御先祖からの命のつながりがあったからです。
今回は、御先祖の思いについて学びましょう。
若き王の願い
マガダ国の頻婆娑羅王は、お釈迦様の教えを深く信じており、国をあげて教団を支え、護っていました。
王は、ある日、お釈迦様と弟子たちが住みやすく、国民がお釈迦様の御説法を聞きやすい土地を探し、教団初めての精舎を建てて、お布施しました。ところが、その晩、頻婆娑羅王は、夜中に奇妙なうなり声を聞き、一晩中、うなされました。翌朝、心配になった王は、お釈迦様にお尋ねしました。
「昨晩の怖いうなり声は何でしょう。私の身に何か起こるのでしょうか」
すると、お釈迦様は仰いました。
「王よ。心配することはない。それは、王の先祖の中で、餓鬼の世界に生まれた者の声である。王は昨日、竹林精舎を施し、善行を積んだ。王の先祖は、その行いを喜び、功徳が廻し向けられることを楽しみにしていたが、廻し向けがなかったため、あのように嘆き悲しんだのである」
お釈迦様から御先祖の思いを聞かされた頻婆娑羅王は、御先祖のことを忘れていたことを心から反省しました。そして、御先祖の幸せを願いながら、功徳の廻し向けを行いました。
すると、お釈迦様は、餓鬼の世界に生まれて苦しんでいた、王の御先祖の顔が、安らかな顔に変わり、喜んでいる姿を、不思議な力で見せて下さいました。御先祖の様子を見た王もまた喜び、安らかな気持ちになりました。
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