少年たちは、毒ヘビにかまれるのを恐れ、ヘビを叩きました。
たとえば、世の中の多くの人は、アリやハエが家に入ってきたり、蚊にさされそうになったら、この少年たちのように、叩いたり、殺虫剤で退治しようとするでしょう。これらは、人間の立場から見れば、自分や家族を守るための、当たり前の行動です。そのため、少年たちも、まさかお釈迦様に注意されるとは、思いもよらなかったことでしょう。
しかし、相手の立場になって考えてみて下さい。ヘビや虫たちにも、同じ命があり、自分たちが生きていくために、食べ物を探し、敵から身を守ろうとしています。そう考えると、ヘビは一生懸命生きようとしているところを、人間によって一方的に傷つけられた、ということになります。
このように、自分が善い行いだと思ってしたことが、相手の立場に立ってみれば、実は大きな「悪」になっている、ということがあるのです。
命に感謝する心
私たちは、便利で快適な生活のために、自然を破壊して、動植物が生きづらい環境にしてしまったり、食べるために必要以上に命を奪い、食べきれなかったら簡単に捨ててしまったりしています。そして、日々、世界中で、人の命を奪う事件や争いが起きています。
仏教では、生き物を殺すことを「殺生」といいます。直接、生き物の命を奪うことだけではなく、魚や肉、野菜を食べることも殺生であり、私たちが生きていくために、どうしても犯してしまう罪の一つです。
お店に行けば、新鮮な魚や肉、野菜をいつでも買うことができます。パックに詰められている状態が当たり前となり、それらが元々は生きていたことを忘れてしまいそうです。たとえば、「いただきます」と手を合わせる時などには、動植物の命を頂いていることを思い出すようにしましょう。そして、嫌いな食べ物があっても、残して捨ててしまうことなく、命に感謝して頂きましょう。
他にも、道を歩いている時、知らないうちに、道にいる虫を踏みつぶしてしまうことも殺生であり、さらには、腹を立て、言葉や暴力で、人の心を傷つけることも殺生となります。このように、殺生は、人間が生きていく上で、避けて通れるものではありません。それでも私たちは、自分の行動を見つめ直し、むやみに殺生をしないことを心がけていくことが大切です。
人間も動植物も、互いに支え合って、同じ地球上で生かされている仲間です。相手の立場に立って考え、思いやりの心をもって行動し、身の回りの命を大切にしていきましょう。
文・秋空 あゆむ
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