銀は、昔から食器やアクセサリーに用いられてきましたが、放っておけば、空気中の物質と反応し、黒ずんできます。これが、いわゆる銀の「サビ」です。
このサビを、銀細工師は一つ一つ、ていねいに磨いて、取り除きます。
この作業は、少しずつ行わなければ、銀に傷がついてしまいます。そのため、ゆっくりと時間をかけるのです。
根気がいりますが、この作業を経て、銀は味わい深く美しい輝きを放ちます。
では、私たち自身を振り返ってみれば、どうでしょう。銀のように、心に 「サビ」が生じてはいないでしょうか。
体が汚れるのと同じように、人の心には、生まれた瞬間から汚れが生じていきます。物惜しみをしたり、怒ったり、怠け心が起きる度に、心は汚れていきます。その汚れを、銀のサビを取り除くように、注意深く、根気強く取り除いていくなら、私たちの心の内に秘められている、清らかで美しい心が表れてくるのです。
一歩一歩 前に進む
お話に出てくる男は、比丘たちの衣が汚れたと見たら、その度に整地や掃除をして、周りをきれいにしていました。そして、比丘たちが汗をかけば、日陰を作り、雨が降れば、ぬれないように建物を建てるほどになりました。
このように、気づいた時に、すぐに善を行う習慣がつくと、いつのまにか、建物を建てるほどの善が行えるのです。
お釈迦様は、その時々に、少しずつ、善を行うと、次第に、心の汚れが取り除かれると説かれました。
私たちもまた、今の自分にできること、身近にある善を少しずつ行うことが大切です。
皆さんは、学校の教室や廊下にゴミが落ちていたら、すぐに拾うでしょうか。それとも、掃除時間に当番が拾うからと、見て見ぬふりをするでしょうか。
もし、すぐに行動できないなら、善を行う習慣がついていないということです。そのまま過ごしていれば、いつまでたっても、善を積むことができないでしょう。
気づいたらすぐに行動し、一歩一歩、前に進んでいく。その努力の積み重ねが、清らかな心を育んでいくのです。
文・夕凪 ねね
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