困ったり落ち込んでいる時、人はそのことを表情や仕草に表さず、心の中に抱え込むものです。しかし、声や顔には表れなくても、不安や戸惑いでいっぱいの心は、時として誰かの一言を待っています。
私たちは、そんな心にいち早く気づき、相手を思いやることが大切です。
その人は励ましてほしいのか、話を聞いてほしいのか、一緒に悩んでほしいのか、褒めてほしいのか、それとも厳しく叱ってほしいのか、と相手の心を想像し、相手の身になって考え、一番相手のためになるような言葉を伝えるのです。
お釈迦様は、悩み苦しんでいる人に説法される際、その時話をする相手に合わせて、内容を変えてお話しされました。
相手の言葉や仕草の裏に隠された心を思いやり、その苦しみを自分のことのように感じられ、相手を安心させるため、時に優しい言葉で、時に厳しい言葉で、いつも温かく導かれたのです。
話し上手ではなく
心のこもった言葉は、相手を明るい気持ちにさせ、自分の心も晴れやかにします。
言葉とは不思議なもので、言った本人にはわからずとも、善い方にも悪い方にも、自分の心がそのまま伝わります。だからこそ、格好つけずに、恥ずかしがらずに、相手のことを本当に思う真心が大切です。
失敗して皆から見放され、立ち直れない時に、ただ一人、手をさしのべて、「一緒にやろう」と声をかけてくれるその一言で救われるものです。
すらすらと説明できる話し上手や格好よい言葉が、必ずしも、説得力があるとも限らなければ、ましてや人の心を打ち、感動させるとも限りません。
むしろ、しゃべるのが下手な人が、たどたどしくても、一生懸命になって、自分の心を相手に訴えかける、その言葉の方が、よほど相手の心を動かし、心に響くものです。
真心から生まれた言葉は、たとえ一言であっても、相手の心に強く響き、言葉を受けた本人は、何日も何年も時間が経とうが覚えていて、その人の人生を左右することさえあります。
言葉を伝えるということは、その時その時に、たった一人の人と、心を通い合わせることなのです。
相手がうれしい時には一緒になって喜び、悲しい時には一緒に悲しみましょう。そして、人の心の苦しみにいち早く気づき、本当に心をこめた言葉をかけて、これまで出会ってきた友やこれから出会う友と、本物の絆を築いていきましょう。
文・青空 みやび
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