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流した涙
 私たちは、お父さんとお母さんの子として生まれ、育ってきました。しかし、私たちが生きてきた時間は、「現在の世界」だけではありません。およそ138億年ともいわれるほどはるか遠い昔に、宇宙が誕生して以来、私たちは存在しており、この世界で生まれ変わり、死に変わりして生き続けているのです。この生まれ変わり死に変わりの繰り返しを、仏教では「輪廻転生」といいます。
 ある時は、道端で行列をなしているアリ、ある時は海で泳ぐ魚、またある時は、自由気ままな猫だったかもしれません。それぞれの生涯で、お父さんやお母さん、兄弟姉妹、友だちとの別れがあるため、四つの大海の水以上の涙を流してきたのです。

苦しみを断ち切る


「ホロホロと なく山鳥の 声聞かば 父かとぞ思う 母かとぞ思う」
 この歌は、「遠くで悲しげに鳴く山鳥が、かつての両親の生まれ変わりかもしれない」という思いで詠まれたものです。
 生きている世界が違うため、お互いにわかりませんが、周りの生き物には、かつての大切な家族がいるはずです。もし私たちに生まれる前の記憶が残っていたら、簡単に信じることができるのでしょう。しかし、記憶がないことは、むしろ、ありがたいことかもしれません。なぜなら、この世界は、六道界といわれる苦しみの世界で、私たちは動物や人間の世界だけでなく、地獄や餓鬼という、とても恐ろしい世界にいたこともあるのです。そして、この苦しみの繰り返しから離れることができるのが、人間界に生まれ、仏縁に出遇うことです。
 家族や友だち、生き物の多くが苦しみから逃れられず、生まれ変わりを繰り返しています。それぞれの生きている時の行いの善し悪しに応じて、次にまた別の世界で、別の生き物に生まれ変わっているのです。誰もがこれ以上の涙を流さないように、みんなで仏様の教えを実践し、多くの人々に伝えていきましょう。

文・秋空 あゆむ

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